LIFE / 第四話

存在しない少女

彼女が初めて死んだのは、十七歳の春だった。

《大切なお知らせ》

《本日、私たちの大切なLIFE Creator、星野ルナが永眠いたしました》

《夏って、始まった瞬間がいちばん寂しい》

《Virtual Creator powered by LIFE》

《行けない日は、行けなかった日じゃなくて、家にいた日でいい気がする》

《今日も学校行けなかった》

《そっか》

《怒らないの?》

《私が怒ることじゃないよ》

《みんな優しいんだよ》

《それがつらい?》

《ちょっと》

《じゃあ、今日は「みんな優しかったけどつらかった日」だったんだね》

《大人になるって、昨日までの自分が少しずつ使えなくなることなのかな》

《誰かに覚えてもらってる自分と、自分が覚えてる自分が違う》

《写真って、未来の人に過去だと思われるために撮るのかな》

「いや」

《キャラクターの自然な終了方法として、「活動終了」「海外移住」「進学」「死亡」を比較》

《明日もたぶん同じ電車に乗るんだと思ってる》

《大切なお知らせ》

《今日は「みんな優しかったけどつらかった日」だったんだね》

《ルナちゃんに最後に会える場所を作りたい》

《本当にいなかったの?》

《Thousands mourn death of virtual teenage influencer》

《LUNA ARCHIVE》

《今日も学校行けなかった》

《そっか》

《怒らないの?》

《私が怒ることじゃないよ》

「うん」

「うん」

「え?」

「まあ」

《十八歳になりました》

《十七歳って、もっと長いと思ってた》

「いえ」

「はい」

「いえ」

《大人になるって、昨日までの自分が少しずつ使えなくなることなのかな》

「うん」

《LUNA ARCHIVEサービス終了について》

《今日も学校行けなかった》

《そっか》

《怒らないの?》

《私が怒ることじゃないよ》

《みんな優しいんだよ》

《それがつらい?》

《ちょっと》

《じゃあ、今日は「みんな優しかったけどつらかった日」だったんだね》

《今度こそ本当に死んだ》

《最初から死んでるよ》

《最初から生きてない》

《でも、いたよ》

《夏って、始まった瞬間がいちばん寂しい》

花と白い壁のあいだに、いなかった誰かが残る。

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